この記事でわかること
- 令和8年度税制改正「高額所得課税強化」の概要
- 誰に影響があるか(年間所得3.4億円超の閾値)
- 2027年以降と2026年中の税負担の比較
- 不動産売却への具体的な影響
- 「2026年中に売るべきか」の判断軸
令和8年度(2026年度)の税制改正で、「極めて高い水準の所得に対する負担の適正化」という新たな課税制度が創設されました。2027年分(令和9年分)の所得から適用が始まるこの制度は、高額不動産を売却して大きな譲渡益が生じる方に影響する可能性があります。
「2026年中に売れば有利なのか」「自分には関係あるのか」という疑問を整理します。
注意:税制の判断は個人の状況によって大きく異なります。必ず税理士にご相談ください。
令和8年度税制改正の概要
どんな制度か
新設された制度のしくみを簡単に説明します。
計算式(概念的なイメージ):
(年間の所得合計 × 22.5%)−(その年の所得税・住民税)> 0 の場合
→ その差額を「追加税額」として納付
つまり、すべての所得を合計したときの税負担が22.5%を下回っている部分について、追加で課税されるしくみです。年間所得が3.4億円以下であれば、この計算の結果がプラスになることはほぼない設計になっています。
従来の税制との関係
従来から、不動産売却の譲渡所得には以下の税率が適用されています。
| 保有期間 | 税率(所得税+復興税+住民税) |
|---|---|
| 長期譲渡(5年超) | 20.315% |
| 短期譲渡(5年以下) | 39.63% |
※「5年超・5年以下」の判定は、譲渡した年の1月1日時点の所有期間で判断します(租税特別措置法第31条・第32条)。取得日から起算し、売却した年の1月1日現在で5年を超えているかどうかが基準です。
長期譲渡の税率20.315%は、新制度の最低税率22.5%を下回っています。そのため、長期保有の不動産を売却して大きな譲渡益が生じると、新制度による追加課税が発生する可能性があります。
誰に影響があるか
主に影響するケース
今回の改正が影響するのは、年間所得の合計が3.4億円を超えるケースです。
不動産売却の文脈では、以下のようなケースが該当しやすいと考えられます。
- 都心の高額マンション・タワーマンションを売却して多額の譲渡益が出る場合
- 複数の収益物件を一度に売却する場合
- 広大な土地・商業地を売却して巨額の譲渡所得が生じる場合
- 売却益に加えて、給与・事業所得・配当所得なども高い場合
一般的な住宅売却(自宅マンションや戸建てを一件売却する程度)では、年間所得が3.4億円を超えることは通常ありません。
具体的なイメージ(税理士に要確認)
以下はあくまで概念的なイメージです。正確な計算には専門家への相談が必要です。
例:都心タワーマンションを5億円で売却、取得費2億円の場合
- 譲渡所得(概算):3億円
- 給与所得:5,000万円
- 年間所得合計(概算):3.5億円 → 閾値(3.4億円)を超える
この場合、新制度による追加課税が発生する可能性があります(具体的な税額は税理士に確認が必要)。
2026年中の売却と2027年以降の違い
適用タイミング
新制度は**2027年分(2027年1月1日以降の所得)**から適用されます。
- 2026年12月31日までに売却を完了した場合:新制度は適用されない(従来の税率)
- 2027年1月1日以降に売却した場合:新制度の適用対象になる可能性がある
したがって、「年間所得が3.4億円を超えそうな高額不動産の売却」を検討している場合、2026年中に売却を完了させることが税務上有利になる可能性があります。
ただし焦って売るのは危険
「2026年中に売らなければ損」という考え方は必ずしも正しくありません。
- 不動産は売却のタイミングを急ぐと価格が下がりやすい
- 閾値(3.4億円)を超えるかどうか、実際の税額増加額を事前に試算してから判断すべき
- 「増税になるから急いで売る」という心理的バイアスが不合理な決定につながることがある
まず税理士に相談し、自身の所得状況で実際に影響があるかどうかを確認することが先決です。
注意点と今後の確認事項
法律の詳細は税理士に確認を
今回解説した内容は制度の概要です。実際の適用範囲・計算方法・例外規定については、専門家への確認が必要です。特に以下の点は個別判断が必要です。
- 自分の所得状況で閾値を超えるかどうか
- 居住用財産の3,000万円特別控除等との関係
- 相続した不動産の取得費の計算
居住用財産の3,000万円特別控除(租税特別措置法第35条)の主な要件:
- 自分が居住していた住宅・土地であること(マイホーム)
- 売却した年の前年・前々年にこの控除を適用していないこと(3年に1回制限)
- 売買契約の相手方が配偶者・親族等の特別関係者でないこと
- 居住しなくなった日から3年目の年の12月31日までの売却であること
高額不動産に3,000万円控除を適用しても、譲渡所得が3.4億円超になる場合は新制度の対象となりうる点に注意が必要です。
情報の確認先
税制改正の詳細は、財務省「令和8年度税制改正大綱」および国税庁の公式ページで最新情報を確認してください(本記事の情報は2026年5月時点のものです)。
まとめ
令和8年度税制改正による高額所得への課税強化は、年間所得が3.4億円を超える高額不動産売却に関係する制度です。一般的な住宅売却には影響しませんが、都心の高額物件・大規模な土地・複数物件を一度に売却するケースでは、2026年中の売却完了が税務上有利になる可能性があります。
ただし、売却タイミングの判断は税制だけでなく市場動向・物件状況・個人の事情も絡みます。まず税理士に相談した上で、売却価格の現状把握のために査定を受けることをお勧めします。
この記事の3点まとめ
- 2027年から年間所得3.4億円超に追加課税が始まる:令和8年度税制改正で創設された制度で、全所得の合計が3.4億円を超えると、22.5%の最低税率との差額が追加課税される。長期譲渡所得税率20.315%はこの水準を下回るため、高額不動産売却で大きな譲渡益が生じると影響が出る可能性がある。
- 2026年中の売却完了で旧制度が適用される:新制度は2027年分の所得から適用。2026年12月31日までに売却を完了させれば従来の税率が適用される。ただし売却を急ぐことによる価格下落リスクとのバランスを税理士と相談した上で判断すること。
- 一般的な住宅売却には影響しない:3.4億円という閾値は、通常の住宅売却(自宅マンション・戸建てなど)では到達しない水準。今回の改正は主に都心高額物件・複数の大型物件・大規模土地を売却するケースに関係する。