この記事でわかること

  • 査定書に書かれている内容の読み方
  • 高い査定額を鵜呑みにしてはいけない理由
  • 査定根拠(比較事例)の正しいチェック方法
  • 複数社査定が必須な理由と20〜30%差の実態
  • AI査定と書面査定の使い分け

「査定書」は不動産売却の通知表

学校の通知表が「この子の現在の学力」を数値で示すように、不動産の査定書は「この物件の現在の価値」を金額で示したものです。しかし通知表と違うのは、査定書の点数(価格)は会社によって大きく異なるという点です。

同じ物件でも査定会社によって20〜30%の差が出ることは珍しくなく、1,000万円以上の開きが生じるケースも実際にあります。なぜこれほど差が出るのか、査定書の読み方から理解していきましょう。

査定書に書かれている内容

不動産会社が作成する査定書(正式には「価格査定書」または「査定報告書」)には、おおむね次の項目が記載されています。

1. 査定価格(メインの数字)

最終的な提示価格。「○○○○万円」と明示されるほか、「○○○○万円〜○○○○万円」と幅で提示されることもあります。

2. 物件の基本情報

  • 所在地・地番・地目
  • 土地面積・建物面積(延床面積)
  • 築年数・構造(木造・RC等)
  • 用途地域・建ぺい率・容積率

3. 査定根拠となる比較事例

ここが最も重要です。 査定書には周辺の成約事例(過去に実際に売れた物件)または売出中事例が記載されています。これが「なぜこの価格なのか」の根拠になります。

4. 市場動向・流通性の評価

「この物件は3ヶ月以内に売れる可能性がどの程度か」という流通性コメントが記載されているケースもあります。

5. 推奨売出価格と下限価格

「最初にこの価格で出しましょう(売出価格)」「最終的にはここまで下げる必要があるかもしれない(下限価格)」という形で提示する会社もあります。

高い査定額を信じてはいけない理由

複数社に査定を依頼すると、提示価格に大きな差が出ることがあります。このとき「一番高い価格を付けた会社に頼もう」と考えるのは、実は危険な判断です。

「釣り上げ・後値下げ」の手法

一部の不動産業者は、意図的に高い査定額を提示して媒介契約を獲得し、売れないと判断したら値下げを提案するという手法(いわゆる「釣り上げ」)を使います。

売主側の心理として「高い価格を提示してくれた会社のほうが熱心に売ってくれそう」と感じるのは自然です。しかし実態は「高い金額で釣る→値下げ圧力をかける→最終的に相場並みか相場以下で売れる」というパターンになりがちです。

こうなると、相場より高い価格で売り出した分だけ市場での露出期間が長くなり、「長期在庫」として買主から足元を見られるリスクも生じます。

正しい判断軸:査定額ではなく「根拠」で選ぶ

査定会社を選ぶ基準は「査定額の高さ」ではなく、「査定根拠の説得力」です。具体的には比較事例の内容を必ずチェックしましょう。

査定根拠(比較事例)の見方

査定書に添付される比較事例を読む際は、次のポイントを確認してください。

チェックポイント1:事例の距離

比較事例は原則として対象物件から500m〜1km以内のものが信頼性が高いです。「最寄り駅は同じだが徒歩15分vs8分」という差でも価格は大きく変わります。遠い事例を都合よく使って価格を高く見せていないか確認しましょう。

チェックポイント2:築年数の近さ

「築10年の戸建て」の事例で「築3年の物件」を比較に使っていたら、明らかに不適切です。築年数は±5年以内の事例を使っているかを確認します。

チェックポイント3:面積の近さ

土地面積・建物面積がかけ離れた事例は参考になりません。面積が倍以上差がある事例は除外して考えましょう。

チェックポイント4:成約事例か売出事例か

査定書によっては「現在売り出し中の価格」を根拠にしているケースがあります。売出中の価格は「希望価格」であって「実際に売れた価格」ではありません。成約事例(実際に売れた価格) をベースにしているかを確認しましょう。成約事例はレインズ(不動産流通標準情報システム)のデータから取得できます。

チェックポイント5:事例数と透明性

事例が1〜2件しかない査定書は根拠が薄いです。3件以上の事例を挙げ、それぞれの物件概要・成約日・成約価格が明記されている査定書が信頼できます。

複数社査定が必須な理由——20〜30%差の実例

「1社に依頼すれば十分」と思っている方も多いですが、複数社に査定を依頼することは不動産売却の鉄則です。

実際の差の規模

  • 2,000万円の物件:20%差なら400万円の開き
  • 3,000万円の物件:30%差なら900万円の開き

この差は「依頼する会社次第」で生じています。1社だけに査定を依頼した場合、その数字が妥当なのか高いのか低いのかを判断する材料がありません。

何社に依頼すべきか

最低3社、できれば5社以上に査定を依頼することを推奨します。一括査定サービスを使えば、一度の入力で複数社の査定を同時に取れます。

査定を複数取った上で:

  1. 極端に高い査定額には根拠を詳しく聞く
  2. 根拠が弱ければ除外する
  3. 残った中から対応の質・実績・根拠の説明力で選ぶ

という判断をすることで、適正な業者選びができます。

口頭査定と書面査定の違い

口頭査定(簡易査定)

電話やメール、AI査定ツールによる概算提示。その場で「おおよそ○○○○万円くらい」と伝えてもらえますが、現地確認なし・根拠資料なし・法的な根拠はありません。あくまでも参考値です。

書面査定(訪問査定)

不動産会社の担当者が実際に物件を訪問し、外観・内装・設備・周辺環境を確認した上で、根拠となる比較事例を添付した査定書を作成して提示するもの。信頼性が高く、このレベルで複数社比較することが理想です。

AI査定の精度と限界

近年はポータルサイトや不動産テックサービスが提供するAI査定(自動査定) が普及しています。特徴を整理します。

項目AI査定訪問査定
所要時間即日(数分)1〜2週間
費用無料無料
精度±20〜30%程度の誤差あり高精度
根拠アルゴリズム(非開示が多い)比較事例・担当者判断
個別要因の反映弱い(内装・日当たり等は未反映)強い

AI査定は「相場感を素早くつかむ」ためのツールとして有効ですが、リフォーム済みか未リフォームか・眺望・日当たり・近隣の騒音といった個別要因を反映できないため、実際の売却価格とズレることが多いです。

AI査定で「相場の目線」を持った上で、訪問査定で精度の高い査定書を取る——この2段階のアプローチが最も効率的です。

まとめ・買取査定を複数社で比較するなら

査定書は不動産売却の「通知表」ですが、その点数(価格)は業者によって大きく変わります。高い数字を提示した業者が最善とは限りません。根拠となる比較事例をしっかり確認し、複数社を比較した上で依頼先を選ぶことが、最終的な売却価格を最大化するための基本です。

複数社への一括査定依頼なら、一度の申込で査定書を比較できます。仲介査定だけでなく、買取価格も同時に確認することで「仲介と買取どちらが有利か」を正しく判断できます。

査定書の見方に不安がある方も、専門スタッフがわかりやすく解説しますのでお気軽にご相談ください。